怨みの猫がこわい!‥川島のりかず
ひばり書房はタイトルや表紙を変えたりの荒技に出たりするので、
正直、彼の作品の正しい発表順はわからない。
故に彼が《発狂の世界》をいつから開花させたのも
はっきりとわからないのですが、
彼の《発狂作品》では
かなり初期の部類になると思われるこの作品。
なにもかもがぶっとんでる。
彼の発狂の美学の“入門書”に相応しいと
個人的には思ってる。(お値段的にも)
:
今さっき、猫一匹殺したと思えない
このひょうきんさ(笑)
こんなひょうきんな子が
発狂して精神世界に閉じこもるとは
誰が予想できたでしょう?
:
小学生にして
占いに通うという設定もなかなかすごいが…
ステレオタイプの占い師!!!!
川島のりかず大先生の描く
“占い師の世界観”も色々すごい!
:
占い師の言葉を信じて
熱心に“石”を磨く主人公。
そんな我が子を見て、
心配になって…
石を捨ててしまった両親。
これが運命の別れ道…TT
おお〜っ
あの石がなければ
わたしは死ぬ〜〜っ
:
そして完全に精神世界(猫の世界)に入り込んでしまった主人公
「石なんてない方がキミのためだ
このまま家へ帰りなさい」
「石を持ち続けると
わしらのようになるぞ」
さりげなくこの世界では
“家が飛んでいる描写”も見事!
家=両親=世間=現実
両親は一般世間の常識として
「石」を投げ捨ててしまった。
ベタな発想で申し訳ないけど
この作品における「石」とは「意志」の比喩だと思う。
主人公は親の意見(今までの価値観)よりも
占い師の言葉を信じた。
これは主人公自身が
「新しい価値観」を生み出したということなんだと思う。
家(世間)を捨てて
自分の意志を持った。
実際、主人公がいる世界は…
こんな感じだ。
宙に浮いているものをよく見て欲しい。
・服(衣)
・冷蔵庫(食)
・家(住)
・時計(時間)
・ペン(仕事※川島先生は漫画家だ)
この世間で生きるのに必要なものが
宙に浮いているのだ。
こんなに精神世界を巧みに表現できるのは
川島のりかずしかいないと思う。
家を捨てて「石を探すこと」を決めた主人公。
スカートやぬいぐるみ(なかなか気味が悪いのも趣がございますね)も追加され、
完全に主人公は現実世界から離れたことを
この絵から読み取れますね。
(しかし、ナイフと魚はなんの比喩なんだろ…)
:
この悲しい現実よ…pq
あのとき両親が“世間体を気にせず”
主人公が納得するまで…
というか、占い師のお許しが出るまで
石を磨かせてたら…。。
主人公は現実世界に戻れたかもしれない…。。
けど、
「正気の世界にいるときよりも
しあわせな顔だったのだ」と最後に書かれたら
なんにも言えねー(笑)
川島のりかずの発狂作品って
最終的に「しあわせって何?」と考えさせられますよねw
初期の作品だから
「死の恐怖から精神世界に逃げ込む」が
逆に新鮮かも!?
彼のほとんどの発狂作品は
「この現状を生きるのが辛くて発狂」する
“生きることが怖くて発狂”パターンが多いから。
ある意味で
この作品はオーソドックスな発狂かもしれませんね。
:
しかし、、
「わたしは占い師ですよ
なんでも見えるのよ」と豪語しといて
都合が悪くなったら…
「わたしには断言できません」と
逃げ出す占い師よ…TT
これぞ占いの真実かもしれませんね(笑)