フランケンシュタインの男‥川島のりかず
いったい
僕はどこへいっちまったんだ
今の僕は
ぬけがらみたいだ
あの充実した僕は
どこにいるんだ…
早く見つけなくちゃ
ぼくは滅んでしまう
:
氏の最高傑作とされている本書。
(おそらく)次作の「死人をあやつる魔少女」といい
この時期の川島のりかずは自身も
《喪失から生まれる虚無感》と戦っていたのかな…。
「抜け殻」というキーワードが
やたらと引っかかる。
:
彼女は体が弱いため
スポイルされて育ったのです
だから
ごうまんでわがままな少女でした
そのうえ
心も体も病んでいました
でも、そこが…
ぼくをひきつける魅力でもあったんです。
この漫画のすごく巧いなーと思う所は。
主人公は「単に傲慢でわがままな女性が好き」なのではなく。
「傲慢でわがままで“自分(主人公)を導いてくれる”女性」じゃないとダメなんだよね。
リードしてくれるというか。
現にわがままで傲慢なだけな嫁とは
うまくいってない(笑)
基本、傲慢でわがままな女性は
自分本位だから
この嫁のように“相手を放置”するけど。
綺理子も女社長も
わがままだけど「主人公を導いて」くれている。
にしても…
嫁とうまくいってなさ過ぎて…ww
:
主人公は《弟ができたこと》で
母親の愛を受けられなくなって
《家庭内の居場所》を失った。
彼にとって初めての《喪失体験》だったのでは?
このように綺理子も…
母という存在を失ってる。
(しかし、ひどい言われ様w)
この二人が一瞬でも
こんなに仲良くなれたのは
《共通の喪失体験》があったからだと思う。
こんな話の流れから…
唐突のフランケンシュタイン様のご登場ww
家庭でも弟に愛を奪われ、
学校でもいじめられ。
そんな中で綺理子が与えてくれた
《フランケンシュタイン》という居場所。
彼は《フランケンシュタインになること》で
自分の居場所を見つけられたんだろうね。
自分ではなく
仮の姿(フランケンシュタイン)になることによって
「自分らしく」いられる。
この矛盾をはらんだ歪みこそ
発狂の美学に繋がるんだろうね。
…頭がおかしくなったんじゃないのかい?
そうかもしれない
いや、狂気の方が救われるさ。
誰も語らないけど、
この台詞、かなり破壊力あると思うのですが…。。
:
主人公はそんな幼少体験によって
《喪失感》を乗り越える方法が
《フランケンシュタインになること》しかないから
なにかを喪失すると
それを埋めようと《フランケン》が現れる。
お前はオレになるんだ
だから死ね
すげえ漫画だwww
:
大人になっても
古い井戸(幼少期に得たフランケンになるという逃避)から
出れないままの主人公は
結局、精神世界へ旅立ってしまった。。
「見なければ
いつまでも解決しませんよ」
皮肉にも彼の場合は
幼少期と向き合ったことで
《フランケンごっこ》を思い出してしまい
解決どころか
深い闇に落っこちてしまったという(笑)
これが精神科医という存在の真実かもしれませんね。
過去を見ない方が…
過去を思い出さなかった方が…
社会では生きていけたかもしれないのに…
「今」や「これから」に目線をやらないで
過去(=心の中の自分)に目線をやったばかりに…
しかし、
これが本当のぼくなんだ
やっと取り戻すことができたぞ
主人公自身は
本当の自分になれたんだから…
ハッピーなのかな!?
本当に色々考えさせられる漫画。
こんな闇深き心理ベースの作品なのに
随所に現れるこのハイテンション感が
化学反応を起こして
最高傑作とされるのでしょうね。
のりかずのひょうきんさが伺えて微笑ましい。
:
過去の映像になると
適度な心地よいノスタルジー感もあったり…
この甘美なかおりも
どこか郷愁をさそい
より作品に深みをあたえているのでしょうね。。
扉絵の破壊力もまた素晴らしい。